「いつかは、田舎で農的な暮らしをおくりたい」「非農家出身だけれど、専業農家もしくは兼業農家としてなりわいたい」と胸に湧く想いと、「自分にできるだろうか」「暮らしていける程度に生計を立てられるだろうか」といった不安のはざまにいる人は少なくないといいます。
ほかの仕事と同じように、農業には技術や知識、経験に裏打ちされたノウハウが必要です。また、独立してなりわっていくためには、営業スキルや経営感覚も求められます。
たしかに、「やったことがない」「している人が身近にいない」ことに取り組むのは、ハードルが高いですよね。国や地方自治体が、日本の農業の衰退を食い止めるために、就農支援制度を充実させていることをご存知でしょうか。また、新規就農者どうしのコミュニティが活発なエリアもあります。
この記事では、就農目線での移住先選びのポイントや、農業で生計を立てるまでのモデルロードマップをご紹介します。
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農業がしたい! 移住先選びのポイントは?
2017年3月に一般社団法人全国農業会議所が発表した「新規就農者の就農実態に関する調査結果」によると、2015年の新規就農者は全国で6万人以上、そのうち8割以上は非農家出身(農家出身でない)なのだそうです。
これだけで、現在まったく畑違いの仕事をしている人も「お?」と勇気が湧くのではないでしょうか。
また、新規就農者がどのエリアで就農しているかも調査していて、トップ3は次の通りです。
新規就農者が、就農するエリアについて
1位 関東地方+東山地方(山梨県・長野県・岐阜県) :24.0%
2位 九州地方 :16.4%
3位 東海地方 :12.4%
全体として7割弱の就農者は就農前と同じ都道府県内で就農しているとのことなので、単純に考えて、約3割が都道府県をまたいで移住して就農したと見ることができるでしょう。
都市部のサラリーマンが地方移住して農家に転身するケースは、決して珍しいものではないことがうかがえます。
同調査で挙がっていた就農地選びのポイントのトップ3は、次の通りです。
就農地選びのポイント
1位 取得できる農地があった :53.1%
2位 就業先・研修先があった :27.7%
3位 行政等の受け入れ・支援政策が整っていた :27.0%
農業をしている近親者がいない場合は、「どうやって農業を学ぶか」が重要になってくるでしょうから、2位・3位のように就農歓迎の態勢が整っているエリアが人気になるのは当然かもしれません。
就農地の人気エリアに挙がっている山梨県や長野県は、認定NPO法人ふるさと回帰支援センターが毎年発表している移住希望地の人気ランキングでも毎年常連のトップエリアです。
移住という観点から見ると、就農した先輩移住者のコミュニティがあることも、就農地選びで重要視するとよいでしょう。暮らしも仕事もライフスタイルがガラリと変わる場面で、同じ境遇の先輩に悩みや喜びを相談・共有できる環境があることは貴重です。
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先輩移住者は、どうやって農業でなりわっている?
農業をなりわいにするには、大きく「自営型(独立型)」と「就職型(雇用型)」の2つのスタイルがあります。
どちらのスタイルも、自治体が主催する移住体験ツアーで体験・相談できる場合があります。気になる自治体の窓口に問い合わせてみたり、自治体のWEBサイトでツアー募集がないかチェックしたりしてみてください。
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自営型(独立型)
「移住×就農」を志向する多くの方が思い描いているのがこちらのスタイルではないでしょうか。一国一城の主として、土地や道具を手配し、試行錯誤しながらもマイペースに専業や兼業(いわゆる半農半X)で農作物を育てていくのが自営型の農家です。
自営型の農家は、農業の技術や知識に加えて、経営感覚や営業スキルも必要になってきます。というと「自分にはできそうにない」と不安が勝る人もいるかもしれませんが、各地には農業技術や経営ノウハウを学べる「農業大学校」(自治体や民間が運営)という教育機関があります。
農林水産省「農業大学校等のご案内」
就職型(雇用型)
意外に思われる方もいるかもしれませんが、農業を営む法人は珍しくありません。就職というかたちで、農業技術や経験値的なノウハウも先輩農家から教わって、安定した収入を得ながら農業に携わることができます。
サラリーマンという立場にはなりますが、ローリスクで就農できるメリットがあります。
制度も充実! 国や自治体による就農支援
先ほど紹介した「新規就農者の就農実態に関する調査結果」(2017年3月発表)によると、非農家出身の新規就農者(就農からおおむね10年以内)の農業所得(収入から必要経費を差し引いた所得)は「113.7万円」だそうです。
「おおむね農業所得で生計が成り立っている」と回答した新規就農者が24.5%に留まっていることからも、農業をなりわいにしてから数年間は、農業だけで生計を立てるのは難しい実態がうかがえます。
そのような農家をフォローするために国や自治体はさまざまな就農支援策を展開しています。
以下、代表的なものをいくつかご紹介しますね。
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農業次世代人材投資資金(旧青年就農給付金):準備型
農業大学校などで農業研修を受ける就農希望者向けに交付される補助金です。
「原則49歳以下であること」「独立就農や雇用就農を目指すこと」などいくつかの要件を満たすと、最長2年間、年間最大150万円の交付を受けることができます。
農林水産省「農業次世代人材投資資金(旧青年就農給付金)」
農業次世代人材投資資金(旧青年就農給付金):経営開始型
独立型で新規就農する人向けに交付される補助金です。
「独立就農時の年齢が原則49歳以下であること」「独立して就農していること」などいくつかの要件を満たすと、最長5年間、定額交付を受けられます。(経営開始1~3年目は年間150万円、経営開始4~5年目は年間120万円)
農林水産省「農業次世代人材投資資金(旧青年就農給付金)」
移住支援金
東京圏(東京都・千葉県・埼玉県・神奈川県)から地方移住して、移住支援金対象の農業法人に就職する場合は、2020年に国が打ち出した最大100万円の「移住支援金」を利用できる可能性があります。
内閣官房・内閣府「地方創生 | 移住支援金・起業支援金」
農業で生計を立てるには、10年スパンで見据えよう
ここまでご紹介してきたように、畑違いの職種から農家への転身は、一般的に短期的に成果を出すのは難しいのが実態です。
また、独立型で就農する場合は、機具や設備、種苗、肥料などへの初期投資に平均560万円ほどの初期投資が必要ともいわれています。
一般社団法人移住・定住促進機構では、「最強就農パターン」として、次のようなモデルロードマップを挙げています。
- 1〜3年目:地域おこし協力隊として移住(1〜3年目)
- 4〜5年目:農業次世代人材投資資金(準備型)を得ながら農業研修
- 6〜10年目:農業次世代人材投資資金(経営開始型)を得ながら就農
国や自治体などの収納支援制度を活用しながら、10年スパンの長い目で生計を立てられるように成長することを目指すと良いでしょう。
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まとめ
年間の新規就農者が6万人以上、そのうち3割程度が都道府県をまたいだ移住をしているというデータからも、「田舎での農的な暮らし」を目指して移住を実践する人は決してレアケースではないことを知っていただけたのではないでしょうか。
「いつかは……」と思っているうちに、補助金などの年齢リミットを過ぎてしまったり、体力的に難しくなったりしてしまうこともあり得ます。
この記事をご覧になって現実味を感じられた方は、現実的なライフプランの選択肢として一度具体的に検討してみてはいかがでしょうか。
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