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森の未来や地域が良くなると信じて行動する|伊那市コラムvol.2

長野県 伊那市

今回お話を伺ったのは、東京から長野県伊那市に移住し、木工や林業を通じて森と暮らしをつなぐ「株式会社やまとわ」でディレクターとして働く吉田かおりさん。

東京で東日本大震災を経験したことをきっかけに、ご自身のライフスタイルの見直しとともに、地方への移住を決断。

伊那市への移住までの経緯と、地方でのライフスタイルについて語っていただきました。

引っ越しの連続だった子供時代

若木

まずはじめに、吉田さんの生い立ちを教えていただけますか?

吉田

生まれは東京ですが、親が転勤族でしたので、幼稚園は学年によって違う園に通うほどでした。

その後も転勤を繰り返す中で、中学3年生からマレーシアに引越し、その後はインターナショナルスクールに通って、高校を卒業後に千葉に戻って来ました。

若木

これまでに何回ぐらい引越しされたんですか?

吉田

20歳までに10回近く引っ越しを経験していると思います。

なので、実家というか地元みたいな場所がなくて、夏休みに帰省する故郷みたいなものに憧れていました。

若木

高校卒業後はどうされたんですか?

吉田

東京の大学を卒業してから、IT企業に5年程勤めていました。

若木

どのあたりで働かれていたんですか?

吉田

オフィスは六本木にあったので、自然豊かな今とは全然違う環境ですね。笑

吉田さんが働かれていた六本木の街並み
若木

たしかに、今とは真逆の環境ですね。笑

どうして転職されたんですか?

吉田

作っているサービスやモノが誰に届いているのかが分からない点や、

今流行っているものが来年には見向きもされないという流れの早さに、心のどこかで虚しさを感じてしまって。

若木

なるほど。

吉田

ちょうどその頃に震災があったんです。

若木

2011年の東日本大震災ですか。

東日本大震災で帰宅難民を経験

吉田

会社勤めだったので、帰宅難民も経験しましたし、

当時は都内の高層マンションに住んでいたんですが、お隣の方の家族構成や名前すら知らない状況で、助け合いの無い暮らしに疑問を感じてしまって。

若木

震災のご経験は、今後の人生どうのように生きるかを考える上で、ターニングポイントになりましたか?

吉田

確実に大きなターニングポイントでした。

東京での週末の過ごし方は「なんとなく買い物に出かける」のが定番でしたが、

消費をしないと満足感を得られない消費社会の暮らし方や、知り合い以外には興味を持たないような人間関係の希薄さに違和感を感じていたので。

若木

なるほど。

吉田

そこから「日々の暮らし」に関わる仕事をしてみたいと考える様になって。

それと、子供を授かったことも移住の大きな転機になったと思います。

若木

きっかけとなったエピソードがあれば、お聞かせいただけますか?

吉田

子育てしながらも仕事は続けたかったので、都内で保育園を探したんですが、認可保育園はどこも空きが無くて、認証や認可外の保育園を見学していました。

ただ、狭くて園庭も無い場所で過ごす子供達の姿を見て、「自分が働く為に、貴重な子ども時代をここで過ごさせるのは•••」という思いを抱くようになったんです。

若木

子供に我慢をさせることに違和感を持たれたんですね。

吉田

こんな複雑な思いを持ちながら仕事と育児を両立させるのは難しいと考え、地方に移住をすることにしました。

移住してから価値観も変化

若木

伊那市に移住してみて、率直な感想はいかがですか?

吉田

すごく住みやすい場所ですよ!

伊那市は方言も強くないし、出会った人達が「良い人そうだな」というのもあって、当初からきっと悪いところじゃないんだろうなと感じていました。笑

自然豊かな伊那市での子育て
若木

移住してみて、他に生活の変化はありましたか?

吉田

いい意味で、東京のように出かける場所が無いので、だんだん物欲も無くなってきました。笑

若木

なるほど!笑

移住で価値観も変化してきたんですか?

吉田

そうかもしれないです。

物欲以上に、自給出来るというか、自分で生み出せる機会が地方にはあります。

東京で当たり前だと思ったいた「ただ購入する」という生活よりも、こっちの方が何倍も豊かだなと思いますし、今の方が楽しいです!

ご家族で家庭菜園を楽しむ様子
若木

東京での生活にはなかった経験ですね。

吉田

そうですね。

そういった意味では、価値観はこっちに来てアップデートされている気がします。

若木

プライベートではどのように過ごされていますか?

吉田

私も夫も学生時代にバスケットボール部に所属していたので、

運動不足解消に、平日の仕事終わりに同世代のバスケ経験者の方たちと子供も交え、一緒にバスケをしたり…。

若木

もしかして、スラムダンク世代ですか?笑

吉田

はい、そうです。笑 

あとは、地域振興の一環で野菜や米作りの講座があるので、家庭菜園をしたり、家族で無農薬の米作りにもチャレンジしています。

米作りにチャレンジしている様子
若木

まさに、地方ならではのライフスタイルですね。

吉田

理想とするライフスタイルに向けて、仕事以外でも徐々に出来てきたかなと実感しています。

若木

伊那市の地域コミュニティとは、すぐに馴染めましたか?

吉田

私の感覚ですけど、伊那市には「無理に地域に飛び込んで必死にネットワーク作らないといけない」という風潮をあまり感じていないんです。

これから移住される方も、あまり固くならず、段々と自分の心地よい人たちと繋がっていけばいいと思います。

若木

それは素敵ですね。

ちなみに、地域の方と繋がれる場などはありますか?

吉田

伊那市内でも地域づくりや山整備など、色々なプロジェクトが動いているので、自分の興味があれば関われる機会は多くありますよ!

若木

そういった活動は、移住された方も参加されているんですか?

吉田

そうですね。

地域活動には、地元の方や移住者の方もいますので、自分のペースで参加されたら大丈夫だと思います。

移住先を伊那市に決めた理由

若木

伊那市への移住は元々決めていたんですか?

吉田

いえいえ!

最初から移住先を伊那市に決めていた訳ではなかったんです。

若木

そうだったんですか?

吉田

夫は在宅仕事なので、お互いが気に入るエリア内で、私が楽しく働ける仕事が見つかれば、という状態でした。

だから、過去の経験を生かしつつ、興味がある仕事がないかと地方の仕事情報を探していました。

若木

良い会社との出会いが、移住先を決める上での条件だったと。

吉田

そうですね。

私の場合、移住先を決めるポイントとして、その土地の魅力以上に「良い仕事に出会えるか」が大きかったと思います。

若木

ピンと来る良い会社はすぐに見つかりましたか?

吉田

いえ、相当苦労しました。笑

地方の小さい会社は、検索しても情報が出てこないし、大きな会社は製造業とか精密機械関係が多くて•••。

若木

そういった声は私たちもよく耳にします。

nabitoでも、吉田さんのような事例を少しでも解消できたらと思っているんです。

吉田

私も求職中に、「そこで働いてる人が見える会社」を探したいと思っていましたが、地方では見つからず•••。

nabitoのコンセプトを聞かせていただいて、都会からの移住者を後押しする上で、仕事の紹介はとても大事な取り組みだと思います。

若木

そう言っていただけると有難いです!

今の会社は、どのような経緯で出会われたんですか?

吉田

興味がある会社や仕事にたどり着く方法を模索していたところ、

ある人にご紹介いただいて、たまたま面接を受けた会社が現在勤めている「やまとわ」だったんです。

吉田さんの仕事風景
若木

なるほど、求職活動前に移住先は決めていなかったんですか?

吉田

そうですね。

「やまとわ」が伊那市にあったので、移住を決めたという流れです。

伊那市でのお仕事について

若木

もしよろしければ、やまとわについてお聞かせいただけますか?

吉田

やまとわは、2016年に創業した新しい会社なんです。

地域材をつかった家具づくりを主軸に、森そのものをつくる林業や森と関わる暮らし方を伝える活動など、事業を少しずつ広げています。

「株式会社やまとわ」のスタッフの方々
若木

吉田さんが担当されているディレクターは、どのようなお仕事内容ですか?

吉田

木製品ブランドの商品開発を職人やデザイナーと一緒になり進めたり、丸太含め材料の調達から販売のことも考えますので、営業企画販促と色々やってます。

社内での打ち合わせの様子
若木

最近のプロジェクトで面白い製品があれば教えていただけますか?

吉田

「経木(きょうぎ)」ってご存知ですか?

若木

経木?初めて聞きました。

吉田

木を紙のように薄く削った日本伝統の包装材があるんですが、実は古くから日本の食文化を陰で支えてきたプロダクトなんです。

信州経木shiki
若木

そうなんですね、これは初めて見ました!

吉田

ラップなどのプラ製品が誕生する前は、おにぎりやお肉など食材を包むのに、日常的に使われていたものです。

今でも、舟形のたこ焼き容器ではよく使われていますよね。

調湿作用があり、適度に水分や油を吸水してくれるので、揚げ物の下に敷いたり、茹でたお野菜の保存する際に下に敷くと鮮度も保てますし、

使い終わったら燃やせるゴミで捨てられるんです。

若木

なるほど、アウトドアでも使えそう!

吉田

使い捨てと聞くと、もったいないイメージもあると思いますが、実は伐期を迎えた使うべき木がたくさんあるんです。

若木

なるほど。

吉田

こちらの製品は、素材から生産まで全て信州伊那谷産ですし、森林課題解決への願いが込められているんです。

やまとわの林業チーム
若木

課題解決を目指す素晴らしいソーシャルビジネスだと思います!

吉田

そうなると嬉しいです!

でも、入社前までは「どうしてこんなに国内に木があるのに、海外の木を輸入して使っているんだろう?」とか、知らないことも多かったんです。

若木

東京では、そういった社会課題に触れる機会も少ないかもしれないですね。

吉田

地域の木を使って、物づくりをして、森が良くなって、地域みんなの暮らしも良くなる。

そういう会社のコンセプトに共感して入社したのですが、生活の中で「森と繋がっている感覚を持てている」ことは、とても幸せなことなんだと実感しています。

地域材の利用にこだわった商品
若木

なるほど、東京の頃とは違ったやりがいを感じているということでしょうか?

吉田

そうですね。

ここでは、必ず森の未来や地域が良くなると信じて、真っ直ぐ思ったことを行動に移していけます。

ですので、純粋に仕事が楽しいですし、それがやりがいにもつながっていると実感しています。

今後の夢や目標について

若木

今後、伊那市でチャレンジしてみたいことはありますか?

吉田

今は、伊那市の中でも比較的街中に住んでいるのですが、もっと自然に近い暮らしを実践していきたいという思いがあります。

若木

とてもいいですね!

吉田

あとは、森林資源を持続可能なものにしていく取り組みを続けていく中で、そういった思いや行動が伊那市の魅力にも繋がっていけば嬉しいですね。

伊那市の豊かな森林
若木

ありがとうございます!

地方に移住したい!と思っても、そこから動ける人と動けない人で分かれると思います。

ご自身を振り返って、吉田さんが移住に向けて行動できた要因は何だと思いますか?

吉田

私の場合、動いてみてダメだったらまた次考えようと思っていたので、そこまで移住に対するリスクを感じずに動けました。

移住って大きな決断だと思いますが、「まずやってみる」というのが成功の秘訣かもしれません。

若木

なるほど、大事な視点だと思います。

吉田

人によって移住における判断基準は違いますが、個人的には移住先が最終地点じゃなくてもいいと思っているんです。

若木

もう少し肩の力を抜いて「まずやってみる!」という楽観的な考え方も大切だということですね。

吉田

気になる土地に行ってみて、なんか違うな?とか、逆にすごく気に入ったとか。

実体験を通じて、初めて自分が求めている生活がより明確になっていくと思います。

実際に現地に行ってみないと、その土地が自分に合うのか合わないのか、インターネットの情報だけではわからないと思うんです。

若木

本当、そうですね。

吉田

あとは、ピンと来る場所やご縁があって、その土地に飛び込んでみたいという気持ちが持てれば、ぜひ前向きに検討してほしいです!

若木

ありがとうございます!

なびとでは、定期的にオンライン移住相談会や交流会を企画していますので、ぜひ吉田さんのお話も改めてお聞かせください!

吉田

はい!ぜひお声かけ下さい!

CITY DATA

自治体情報

庁舎長野県伊那市下新田3050
WEBhttp://www.inacity.jp/iju/
人口約68,000人(2019年3月時点)

EDITORIAL NOTE

若木 愛子

今回のインタビューでは、お伝えしきれなかった魅力が、伊那市にはまだまだあります。ちょっと行ってみようかな?と思ってくれる方が増えたり、実際に伊那市に訪れた方が新たな伊那市の楽しみ方を発見していただけたら、これほど嬉しいことはありません。ぜひ皆さんも伊那市へ足を運んでみてください。


╲移住・地域おこし協力隊╱


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