INTERVIEW by
遠藤 真森さん
【趣味】写真撮影、芸術鑑賞、カフェ・雑貨屋巡り、球技
【出身地】神戸市(大阪府池田市・兵庫県宝塚市に住んだことも)
【UIJターン】Iターン(孫ターン)
【仕事のやりがい】社会課題の最前線で、解決に向けて貢献できること
今回は、豊岡市のグッドローカル農業推進室の遠藤さんに、「地域を巻き込む豊岡流農業推進」についてインタビューさせていただきます!
早速ですが、遠藤さんは今どんな形で豊岡市に関わっているんでしょうか?
株式会社地域計画建築研究所(略称;アルパック)の社員として、豊岡市役所農林水産課のグッドローカル農業推進室に出向しています。
現在週3日間は推進室で勤務し、2日間は会社(アルパック)の仕事を豊岡から主にリモートでしています。
ということは、今は豊岡に住んでいらっしゃるんですね。
住む場所は、どのように探されたんですか?
父が豊岡の出身なんです。
空き家になっていた父の実家に住んで暮らしています。
そうでしたか。
移住前は、どこで生活されていたのですか?
移住前は兵庫県の宝塚市に住んでいました。
育ちは大阪府の池田市というところです。
関西圏のご出身でしたか。豊岡市までは、2時間弱のエリアにお住まいだったということですね。
豊岡グッドローカル農業推進室について
現在、豊岡市で勤務されていますが、
お勤めの会社のことや、市役所(豊岡市役所農林水産課のグッドローカル農業推進室)の仕事内容を教えていただけますか。
現在、株式会社地域計画建築研究所(略称;アルパック)に勤めて4年になります。
アルパックは、主に自治体のまちづくりや地域活性化の支援をしています。
私は特に農業や観光の分野を担当しています。2019年度に豊岡市の農業ビジョンの策定を支援させていただきました。
その後、国の制度を活用しながら、出向し、このビジョンの推進を担当しています。
豊岡市農業ビジョンとは?
豊岡市のグッドローカル農業推進室では、「豊岡市農業ビジョン」で描いた「豊岡グッドローカル農業(持続可能で幸せを感じる社会の実現に貢献する農業のあり方)」を広めるための事業を行っています。
豊岡グッドローカル農業そのものを紹介するだけでなく、実際に行われている”グッドローカル”な取組の情報発信や、新たなプロジェクトの創出・運営支援などに取り組んでいます。
アルパックさんのHPを拝見したのですが、地域課題の解決に向けて様々な取り組みをされていますよね。豊岡に移住して、今のお仕事をしようと思ったのはどうしてですか?
理由は語り切れないほどあります(笑)
ビジョンは作っただけでは意味がないので、実現させるところにも携わりたいと思っていたことが大きいですね。
「豊岡グッドローカル農業」に持続可能な社会を目指すうえで大きな可能性を感じたこと。
豊岡市のまちづくりや目指すところに共感していたことも大きな理由です。
なるほど!
豊岡市はコウノトリ野生復帰に向けて「生きものとの共生」を目指していて、昔からとても共感していました。
それから、大学時代に演劇サークルで活動していたこともあり、芸術や演劇に関心があるんです。豊岡市は、劇作家の平田オリザさんが主宰をつとめる劇団が移転してきたり、芸術文化や観光を学ぶ大学ができたりと、芸術・演劇が息づくまちになりつつあります。
これまではほとんど都市部でしか暮らしたことがなかったんですが、身近に豊かな自然があり、かつ文化芸術も盛んな環境で暮らしたい気持ちもありまして。豊岡という地に呼ばれたような感じだと思っています(笑)
住むところも既にあって、取り組みにも、環境にも共感して。
絵に描いたようにハマって5拍子ぐらい揃ってそうですね。
「コウノトリ育む農法」で作られるお米
豊岡で、特に力を入れている農作物は何でしょうか?
田んぼが多い地域で、お米が主な農産物です。生きものと共生できるように環境に配慮した農業が盛んで、その象徴的な存在として、コウノトリの野生復帰を支える「コウノトリ育む農法」で作られたお米があります。
勉強不足で申し訳ないのですが…
「コウノトリ育む農法」で作られたお米は売れているんですか?
ありがたいことによく売れています。最近は海外への輸出もされていまして、欧米を中心にこのお米の魅力を知っていただけるようになってきたと思います。
海外への輸出もされていらっしゃるんですね。豊岡市の農業の取り組みが国内のみならず、海外にまで広まっていっているんですね。
「コウノトリ育む農法」とは
「コウノトリ育む農法」とは、おいしいお米と多様な生き物を育み、コウノトリも住めるゆたかな文化・地域・環境づくりを目指すための農法です。
JAたじま 人と自然が共存する「コウノトリ育む農法」の1年 より
たとえば、生き物が生息しやすい環境づくりのために、冬の田んぼにも水を張る「冬季湛水」の実施、育苗段階からの有機質肥料の使用、無農薬または減農薬(魚毒性の低いものに限る)での安全・安心な栽培など、様々な技術を採用。コウノトリのエサとなる生き物を育て、コウノトリを守り、ゆたかなたじまをつくります。
関西屈指のピーマンの産地!特産品の「たじまピーマン」
他にも野菜、果物、花など、たくさん作られています。
あまり知られていないかもしれませんが、実は関西屈指のピーマンの産地で「たじまピーマン」という特産品もあるんですよ。
豊岡には、「農業」の魅力がたくさんありますね。
農産物には、もちろん魅力がありますが、その農産物を作っている農家さんが本当に魅力的なんですよ。
農家の方と話をすると、農業に対する考え、独自の哲学、アイデアなどを聞かせていただけて、とても面白いんです。
私たち消費者が手にするまでの「ストーリー」を知ることは、とても大切なことですよね。我々も伝えていきたいことの1つです。
活発な議論をもとに作られ、進められる「農業ビジョン」
自治体の計画を作る際には、意見交換や議論などをする委員会が開かれることがあります。
このような委員会は、形式的な議論になることもあるものですが、豊岡の農業ビジョン策定委員会では、委員の農家さんを中心に活発に意見をかわし、丁寧に議論を重ね、”豊岡らしく、新しいビジョン”ができあがりました。現在は、ビジョン実現に向けた農業ビジョン推進委員会を開き、ここでも様々な意見をいただきながら進めています。農産物の魅力だけでなく、人の魅力も大きいと思っています。
いいですね。
地元の課題解決は地元の方々が内発的に行うことにこそ意味がありますよね。
誰もが生きやすい環境づくり 「暮らしの学校 農楽(の~ら)」
そうですね。委員の中に「暮らしの学校 農楽(の~ら)」という施設を運営されている方がいます。
ここは、障害などの理由で社会参加できていない方のための支援施設で、どんな状況下でも生きていけるようにと、食べ物を作り出せる農業をメインに活動されています。
就労支援の側面で成果を上げながら、農作業手伝いや食堂運営を通じて、高齢化の進む地域の問題解決にも一役買っています。
そういう取り組みも素敵ですね。社会支援として農業を取り入れて、それが地元の方々のためにもなるというのは。
市民が主体となって進める「豊岡グッドローカル農業」
豊岡の農業の課題はどんなことがありますか?
全国の例に漏れず、少子高齢化でしょうか。
仕事として主に自営農業を行う方(※)のうち、70歳以上が約66%、60歳以上が約90%という状況です。※基幹的農業従事者
若い方も頑張っていますが、これからどうやって担い手を増やしていくか、模索している状況です。
どこの地域でも就農者の高齢化、担い手の高齢化が課題になってきてますよね。日本全体の大きな国難というか…。食糧不足、食料自給率の低下、担い手不足などはなかなか改善されないと思うんですが、「豊岡グッドローカル農業」という打ち出しやピクトグラムのデザインが、SDGsとも関連性があってすごく面白いなあと思います。
デザインなどのイメージや印象が大事な時代なのかなとも思いますし、これだけでも若い世代で農業に関心がある人のハードルがちょっと下がりそうですね。
いろんな地域が農業の活性化に様々な方法で取り組む中で、この豊岡グッドローカル農業の特徴とはどんなところですか。
「豊岡グッドローカル農業」は未来の豊岡の“良い農業のあり方”のことなんです。
ピクトグラムで表現している12の農業の姿を実現させることで、『環境』『経済』『社会』をより良くし、「持続可能で幸せを感じる社会の実現に貢献する農業」を目指す。そのために、この考え方を農業にかかわる全ての人で共有し、みんなが自分の考えで創意工夫しながら取り組む。そんな農業のあり方です。
「農業のありかた」ですか。
行政の計画で目指す将来像を描くのは一般的で、その将来像に向けてどう進めるかや、重点的に取り組むテーマなども決められたりします。
豊岡市の農業ビジョンもそれは同じなのですが、将来像を目指す考え方をみんなで共有して取り組もうというところや、支援する取り組みを行政が全て決めるのではなく、それぞれが自分の考えで創意工夫して取り組めるようにしようというところが特徴です。
支援の仕組みを整えていくのはこれからですが、いわゆるトップダウン型でなく、ある程度ボトムアップ型を目指しているんです。
なるほど、地域住民が主体的に取り組めるようにし、行政がそのサポートをすることで、新しい活動や面白い取り組みを生み出していくんですね。
ちなみに、みんなで取り組んでいこうという「みんな」には、生産者だけでなく消費者も、市民だけでなく市外の方も含みます。
豊岡産農産物を食べること、観光で豊岡を訪れて収穫体験をしたり農村に宿泊したりすることで「農」を楽しみながら「農」を支えます。あらゆる人が色々な方法で「豊岡グッドローカル農業」に取り組む人になりうるんです。
ほんとうに、「みんな」で考え、楽しみ、作り、関わる「豊岡の農業」ということですね。わくわくしますね。
暮らしは、いろんな部分でつながっているので、農業と他の産業との連携も大事だと思っています。
例えば観光と農業を組み合わせても面白い取り組みが生まれると思いますし、分野問わず、連携してお互いに活性化していくとよいですよね。
いろんな連携がますます発展していくことになると考えると楽しみですよね。
農業×芸術 コラボすることで相乗効果を!
最後に、遠藤さんが、今後力を入れたいことを教えてください。
そうですね。
豊岡市には、芸術関係の方が増えています。芸術と農業で連携できることはないかと考えています。農業も芸術も、自分との接点を意識しない方が多いと思うんです。
誰でも食べ物を食べているし、ほとんどの人は何かしらの芸術を楽しんでいて接点はあるのに、関心が薄いと意識しないので広がらず、いま以上に楽しめないことが多い…それってもったいないなと。
連携した取り組みによって、自分が住むまちの農業、芸術への関心が高まれば、もっと魅力的なまちに見えてくるんじゃないかと思うんです。それが、農業や芸術の課題解決にもつながると思います。
いいですね。それぞれの分野でwin-winになる要素もあるのかなと思いますね。
農業は今後、さらに人手不足になります。
芸術の仕事は、常に仕事がある方はよいですが、そうでない場合にスポットや短期の仕事として農業は十分可能性があります。
実際、市内の農業法人で、アルバイトなどで芸術関係の方を受け入れたいというところもあります。働きたい人と受け入れ先のマッチングは課題ですが、こうした連携もこれから増えてくると思いますね。
ジョブローテーションだったり、副業、兼業を受け入れられる環境が整ってくると面白いですね。
情報発信中!SNSのご紹介
グッドローカル農業を成長させていくために必要なことは何でしょうか?
まずは「豊岡グッドローカル農業」を知ってもらうことだと考えています。SNSなどでの情報発信に力を入れていますが、コロナ禍で大勢集めて周知することも難しいですし、関心の薄い層や高齢の方に知っていただくのは、なかなか難しくて…
具体的な取り組みを増やし、豊岡グッドローカル農業との接点をたくさん作りだしていきたいと思っています。
「豊岡グッドローカル農業」は他にはない非常にユニークな取り組みですし、多くの人に届くといいなと感じました。
これからの展開を楽しみに応援しています!
豊岡グッドローカル農業推進室 SNSのご紹介
EDITORIAL NOTE
岡本 好市
今回のインタビューでは、お伝えしきれなかった魅力が、豊岡市にはまだまだあります。ちょっと行ってみようかな?と思ってくれる方が増えたり、実際に豊岡市に訪れた方が新たなの楽しみ方を発見していただけたら、これほど嬉しいことはありません。ぜひ皆さんも豊岡市へ足を運んでみてください。
「飛んでるローカル豊岡」とは
住まい情報、仕事情報、教育情報など移住に関する基本的な情報はもちろんのこと、市民がライターとして豊岡市の暮らしの情報を市民目線で発信する移住定住ポータルサイト。
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